家族の不安に寄り添うあなた自身のストレス、CBTの視点からどう向き合うか
家族の不安に寄り添う中で感じる自身のストレスについて
大切なご家族が不安を抱えている時、その姿を見守る方々もまた、様々な心労を経験されることがあります。ご家族を支えたいという気持ちの一方で、「どうすれば良いのだろう」「私にできることはこれだけなのだろうか」といった思いや、ご自身の生活への影響から、ストレスを感じることは決して珍しいことではありません。
このような時、ご自身の心の状態を穏やかに保つことは、長期的にご家族を支える上でも大切な要素となります。ここでは、認知行動療法の考え方を参考に、ご自身のストレスとどのように向き合っていくかについて考えてみましょう。
自身の「考え方のくせ」に気づいてみる
認知行動療法では、私たちの感情や行動は、出来事そのものだけでなく、その出来事をどのように捉えるか(認知)によって大きく影響されると考えます。ご家族の不安という状況において、ご自身の中に次のような考えが浮かぶことはないでしょうか。
- 「私がもっとしっかりしていれば、家族はこんなに苦しまないのに」
- 「家族の不安を私が全て解決しなければならない」
- 「この状況は決して良くならない」
このような考えは、ときに私たちの心の負担を大きくしてしまうことがあります。これらの考え方が「正しい」とか「間違っている」という話ではありません。ただ、これらの考えが、ご自身のストレスにどのように影響しているかに、一度穏やかに目を向けてみることが、出発点となります。
穏やかな心の変化を促すためのヒント
ご自身の考え方のくせに気づいた時、それをすぐに変えることは難しいかもしれません。しかし、少しだけ「別の見方」を探してみることで、心の負担が軽減されることがあります。
1. 「考え」と「事実」を区別してみる
頭に浮かぶ考えが、客観的な事実に基づいているものなのか、それともご自身の解釈や感情が強く反映されたものなのか、立ち止まって考えてみます。
- 例: 「私がもっとしっかりしていれば、家族はこんなに苦しまないのに」
- 穏やかな問いかけ: 「本当に、家族の不安の原因が私の『しっかりしているかどうか』だけだろうか。他の要因は考えられないだろうか。」
- 別の考え方: 「私は今の状況でできる限りのことをしている。家族の不安は複雑なものであり、私一人が全てを背負う必要はない。」
2. 他の可能性を考えてみる
一つの考えに囚われてしまう時、「他にどのような見方ができるだろう?」と、穏やかに問いかけてみることが助けになります。
- 例: 「この状況は決して良くならない」
- 穏やかな問いかけ: 「現時点ではそう感じるけれど、これまでにも状況が変わった経験はなかっただろうか。あるいは、ほんの小さな良い変化を見つけることはできないだろうか。」
- 別の考え方: 「今は困難な時期だけれど、時間が経つにつれて状況が変わる可能性も持ち合わせている。小さな変化に目を向けていこう。」
3. 自分自身をいたわる時間を持つ
ご家族のサポートを続けるためには、ご自身のエネルギーも大切です。心身の健康を保つための穏やかな行動を取り入れてみましょう。
- 短い休憩をとる: 数分間、好きな音楽を聴いたり、窓の外を眺めたりする時間を設ける。
- 軽い運動を取り入れる: 近所を散歩する、ストレッチをするなど、無理のない範囲で体を動かす。
- 趣味や楽しみの時間を大切にする: 小さなことであっても、ご自身が心地よいと感じる時間を持つことは、心の安定につながります。
これらの行動は、決してご家族への関心が薄れることを意味するものではありません。むしろ、ご自身が穏やかな状態でいることが、結果としてご家族へのより良いサポートへとつながる道となるものです。
まとめ
ご家族の不安に寄り添う中でご自身のストレスを感じた時、認知行動療法の視点から、ご自身の「考え方のくせ」に穏やかに気づき、別の見方を探してみることは、心の負担を軽減するための一助となるかもしれません。
そして、何よりもご自身を大切にし、いたわる時間を持つことが、長期的にご家族を支え続けるための大切な力となります。状況は複雑で、すぐに解決しないこともありますが、ご自身の心の状態に穏やかに寄り添いながら、一歩ずつ進んでいくことが大切です。